明日の僕らは
無邪気な少年たちは、次の試合までの長い待ち時間を…もて余していた。
そのうちに、ひとり…ふたりと、ボールカゴをバスケットゴールにして…シュートして遊び始める子が増えてきた。
一方で、フィールドを囲むネットへと向かって…ボールを蹴る子もいた。
私は後者の方で、後に審判から戻ってきたコーチに
「通路でボールを蹴るな」と咎められた。
碧は…どちらにも属さずに、チームの簡易ベンチをネット側に運んで。
そこに座ったまま…他のチームの試合を、眺めていた。
コーチが子供たちと絡んで遊び始めても…それでも彼は、ひたすらピッチを眺めていた。
しばらくすると……
コーチは氷水に浸されたタオルを、バケツの中から取り出すと。
私たちに向かって、『しーっ』と人差し指を立てて…碧の背後に忍び寄っていった。
「おーい危ないぞー…」
「あほ、言うな…!」
少年たちのやりとりなど、聞いたもんじゃあない。
背中を向けていた、彼の頭の上で、それがぎゅううっと絞られる。
その時の……リアクションは。
後にチームの笑いのネタとして、いつまでも…語られた。
「ひょうわっっ?!」
びくんと、跳び跳ねた身体。
条件反射でばたつかせた手足…。
突然襲った刺激に、その正体を確認しようと振り返った瞬間に…
ベンチもろとも、彼の身体はステンっと見事に……
ひっくり返ってしまったのだ。
じわじわと…蒸し暑い太陽の光が、仰向けになった彼の顔を…容赦なく照りつけていた。
悪戯の主犯のコーチも、近くにいた…私も。
それから、チームメイトたちとが…微動だにしない彼を囲んで。
「お前…、大丈夫か?」
「どこかぶつけた?」
と口々に語りかける。
「…………。」
呆気に取られていた彼の表情が…緩やかに、穏やかに…変わっていった。
突如、ムクリと身体を起こして。
心配そうなコーチの顔を…じっと見つめると。
綺麗な焦げ茶色の瞳を、三日月のカタチにして…
「超……きもちい~~!」
と、おどけるようにして、叫んだのだった。
それを聞いた少年たちは、大いに笑って。
それから…テントへと走った。
皆自分のスポーツタオルを濡らして、頭の上で、絞り出したのだ。
「ヤベ、本当にきもちいーぞ!」
「ひゃうわ~!」
碧の奇声を真似て、タオル遊びが…始まる。
そのうちに、バケツに入った大きな氷を…頭に乗せる人が出てきた。
「カッパだ、カッパ~!」
すると……、バケツの側に寄ってきた碧が、その中に直接頭を突っ込んだ。
「……気持ちいい…」
クールな顔して、最も大胆なことを成し遂げる。
ユニフォームも、ストッキングも…それから、アスファルトも。
もうぐしょぐしょ。
透けてしまったパンツの色を言い合って、ゲラゲラと笑って。
無法地帯と化したU-8チームを叱ったのは、眉間のシワが寄りに寄った…監督だった。
「最初にしたのはコーチです。だから、コーチが悪い。」
とバッサリと言い切ったのは、やっぱり碧。
コーチはバツが悪そうにすっかり縮こまるし、
正論だ、と思うのに。それが言えない…私たち。
大人たちに促されて、ハンガーに掛けたユニフォームが…テントの中、風でパタパタと揺れて。
次の試合の前にはすっかり乾いていたっけ…。
この、びしょびしょ事件はそれでも、確実に……
彼とのキョリを、一気に縮めてくれた。
そのうちに、ひとり…ふたりと、ボールカゴをバスケットゴールにして…シュートして遊び始める子が増えてきた。
一方で、フィールドを囲むネットへと向かって…ボールを蹴る子もいた。
私は後者の方で、後に審判から戻ってきたコーチに
「通路でボールを蹴るな」と咎められた。
碧は…どちらにも属さずに、チームの簡易ベンチをネット側に運んで。
そこに座ったまま…他のチームの試合を、眺めていた。
コーチが子供たちと絡んで遊び始めても…それでも彼は、ひたすらピッチを眺めていた。
しばらくすると……
コーチは氷水に浸されたタオルを、バケツの中から取り出すと。
私たちに向かって、『しーっ』と人差し指を立てて…碧の背後に忍び寄っていった。
「おーい危ないぞー…」
「あほ、言うな…!」
少年たちのやりとりなど、聞いたもんじゃあない。
背中を向けていた、彼の頭の上で、それがぎゅううっと絞られる。
その時の……リアクションは。
後にチームの笑いのネタとして、いつまでも…語られた。
「ひょうわっっ?!」
びくんと、跳び跳ねた身体。
条件反射でばたつかせた手足…。
突然襲った刺激に、その正体を確認しようと振り返った瞬間に…
ベンチもろとも、彼の身体はステンっと見事に……
ひっくり返ってしまったのだ。
じわじわと…蒸し暑い太陽の光が、仰向けになった彼の顔を…容赦なく照りつけていた。
悪戯の主犯のコーチも、近くにいた…私も。
それから、チームメイトたちとが…微動だにしない彼を囲んで。
「お前…、大丈夫か?」
「どこかぶつけた?」
と口々に語りかける。
「…………。」
呆気に取られていた彼の表情が…緩やかに、穏やかに…変わっていった。
突如、ムクリと身体を起こして。
心配そうなコーチの顔を…じっと見つめると。
綺麗な焦げ茶色の瞳を、三日月のカタチにして…
「超……きもちい~~!」
と、おどけるようにして、叫んだのだった。
それを聞いた少年たちは、大いに笑って。
それから…テントへと走った。
皆自分のスポーツタオルを濡らして、頭の上で、絞り出したのだ。
「ヤベ、本当にきもちいーぞ!」
「ひゃうわ~!」
碧の奇声を真似て、タオル遊びが…始まる。
そのうちに、バケツに入った大きな氷を…頭に乗せる人が出てきた。
「カッパだ、カッパ~!」
すると……、バケツの側に寄ってきた碧が、その中に直接頭を突っ込んだ。
「……気持ちいい…」
クールな顔して、最も大胆なことを成し遂げる。
ユニフォームも、ストッキングも…それから、アスファルトも。
もうぐしょぐしょ。
透けてしまったパンツの色を言い合って、ゲラゲラと笑って。
無法地帯と化したU-8チームを叱ったのは、眉間のシワが寄りに寄った…監督だった。
「最初にしたのはコーチです。だから、コーチが悪い。」
とバッサリと言い切ったのは、やっぱり碧。
コーチはバツが悪そうにすっかり縮こまるし、
正論だ、と思うのに。それが言えない…私たち。
大人たちに促されて、ハンガーに掛けたユニフォームが…テントの中、風でパタパタと揺れて。
次の試合の前にはすっかり乾いていたっけ…。
この、びしょびしょ事件はそれでも、確実に……
彼とのキョリを、一気に縮めてくれた。