明日の僕らは

あの日以来、
君の呼び名は『ミドリ』。

快晴の青空の下、陽炎に揺れる鮮やかなグリーンピッチが良く似合う少年に、ピッタリの…ネーミング。


そんなこんなんで、
『イガグリ頭』と、『ベリーショート』。

スポ少に在籍している間に、私たちが何度そのヘアースタイルになったかは…分からない。

見慣れると…それが当たり前になって。
可笑しなことに、髪が伸びて来る方が…互いに違和感があったりして、

時にバカにしたり、断髪宣言したり…フィールド外では相変わらずの私たちだったけれど。

ピッチの上では…また、違っていた。

高学年になると、MF(ミッドフィルダー)にポジションが固定してきた私は、ここぞというチャンスを…周囲を見渡してある程度判断出来るようになってきた。

ディフェンスの動きを欺くテクニックが…私の真骨頂。
体格・体力においては…徐々に男子と差が出来てきて、そこに頼るほかなかったのが…そもそもの理由でもあった。

呼吸のごとく…当たり前のようにして、君は速いパスも、スペースに送り込んだ球にも、やわらかいタッチで受けてくれるから…

正確なアシストができるのも…自分の力であると、過信していた。

例え見えなくても、ボールはトップポジションの君のもとへと…辿り着く。

「よっ!阿吽(あうん)の呼吸!」なんて大人たちが冗談で言っていることにも、

「あうんの呼吸・・・〇〇斬り!」と意味もわからず流行りの漫画になぞらえてネタにするばかりだった。


けれど……、

そのコンビはいつまでも続くことはなく。

元々ナショナルトレセンにも合格する実力を持っていた君は…

中学では部活ではなく、他市の名門クラブチームへのセレクションにアッサリと合格して。

それから私は…地元の女子サッカークラブチームへと加入して。

チームメイトでは…なくなった。



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