明日の僕らは

思春期への…突入。

いつまでもイガグリ頭でも、ベリーショートでもいるわけもなく。

君はいつかのように…サラサラふわふわの髪になって、私は…結えるくらいの長さになって。


この頃くらいから…だろうか。

学校の廊下で会っても、同じクラスになっても、罵り合うどころか…次第に会話することさえ少なくなって。

どこか他人行儀でかぎこちなくなって。

向けられる笑顔は、あの頃と何も変わらなかったけれど…。それがまた苦しくて、辛かった。



君は、何もしなくとも・・・目立っていた。
元々くっきりとした顔立ち。可愛らしい少年が、精悍な顔つきに変わっていく様は、黙っていても注目を浴びた。

トップリーグでサッカーしているすごい人、と、中学校のサッカー部の面々が噂をどんどん広げて。

肝の座った、落ち着いた性格とリーダーシップも相俟って。

学校で気軽に近づけるような雰囲気はなかった。


授業を終えると、遠方のクラブチームの練習へと向かう為…『放課後』という時間帯は、彼の中学生活にはない。

一方の私は…クラブチームの練習と、それから4級審判資格を習得した後には、スポ少にも顔を出し、試合のラインズマンや主審をつめたりと……休日返上でサッカーへと明け暮れていた。



奇しくも、同じ高校に入学し、男子サッカー部の選手とマネージャーになってからも…その距離感は、ほとんど変わらなかった。

思春期の気恥ずかしさはなくなって、
普通に喋りはする。ちょっとした冗談も言い合う。

いつしか君は私を「田迎」と呼び、私は君を「間宮くん」と苗字で呼び合うようになって。それが、当たり前になった。

用があれば、肩を2回叩いて呼び止められることもあったし、悪戯なんかも、悪びれなくサラリと。

でも、互いの中に踏み込むような会話は…できなかった。

ごく普通の、部員同士。
チームメイト。


ある日、たったの1日を除いては…。




もう、子供の頃とは…違う。
< 8 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop