きみと駆けるアイディールワールド―緑風の章、セーブポイントから―
○プロローグ
「ヤバいヤバいヤバいって~!」
アタシの情けない声が雪原を転がっていく。仲間《ピア》の名前を呼べど叫べど、応える声はなし。びゅおおおぉぉぉっと唸る風の効果音が、寒々しいBGMとコーラスしている。
「なんでみんなハジかれちゃうのよぉぉぉっ?」
仲間《ピア》たちと協力して、このステージの4つのミッションのうち、3つはどうにかなった。でも、ラストのここ、雪山エリアはヤバすぎる。トラップが多いしモンスターも強いし。
バトルに気を取られてたんだ。雪男っぽいモンスターに手こずった。どうにか倒せそうと思ったときにはもう遅くて、崖の突端がビシビシ不穏な音を立てていた。
危ない!
と判断したアタシはとっさに空中浮遊の呪文を自分にかけたけど、ほかのみんなは飛べない。悲鳴を上げる間もなく、雪男はもちろん足場もろとも、崖の下に落ちていった。ジ・エンド。
「アタシひとりでどうしろって言うのぉ……」
未練がましくパラメータボックスを確認する。何回確認しても、奇跡が起こるわけじゃないけどさ。仲間《ピア》のみんなは「崖のトラップによる戦闘不能」、ステージ追放っていうペナルティは発動済み。せっかく、あとちょっとでクリアだったのに。
もうやだ最悪。ハイエストクラスともなれば、チートでしょーってくらい強力なボスはいるわ、1発アウトのトラップはゴロゴロしてるわ、戦闘不能でハジかれちゃうケースが多すぎる。
まあ、じっとしてても仕方ない。アタシはみんなが落ちてった崖に手を合わせて、そこから離れることにした。南無~。
ほんの少し斜面を登ったら、雪山のてっぺんに着いた。白銀に輝くフィールド。BGMも変わったし、今からまさにボス到来! みたいな気配がありありなんですけど。てか、こんなにラスボスに近付いてたのね。残念すぎる。
アタシは岩陰に隠れて、ため息が止まらない。1人で戦えるわけないしさぁ。アタシ、そこそこ上級とはいえ、か弱い魔女っ子だよ? 割と高度な攻撃魔法は使えるけど、物理攻撃には激ヨワだよ?
というか、真っ白い景色の中にひとりぼっちって、いくらゲームの中でも寂しすぎる。もう棄権しちゃおっかな、このステージ。
そのときだった。
声が聞こえてきた。
「どうしてなの? 何で……アイツの意識、ここにいるんじゃなかったの!?」
女の人だ。声の感じからいって、この人、ゲーム内のキャラじゃない。プロの声優さんのしゃべり方じゃないもん。間違いなく、ユーザが操ってるアバターだ。
でも、ちょい待ち。ここ、交流ポイントじゃないんだよ。アタシの仲間《ピア》じゃない人と鉢合わせって、あり得ないんですけど。
もう1つ、声がした。男の人の声だった。
「落ち着きなよ。このあたりのプログラムに乱数が見られたのは、確かなんだろう?」
えーっと。
場違いなこと言ってもいいでしょうか?
いいよね。はい、正直にいきます。
めっちゃ好みの声、来たぁぁぁっ! ヤバいって、これはーっ!
柔らかいんです、彼の声! じゅわっと鼓膜に染み入るみたいに。それでもって、どっちかというと細いんです。しなやかで、伸びがあるんです。透明感があるって言ってもいいですね、うん!
プロかも、この声。地声より低くして、キャラに合う声を作ってるって感じ。深刻そうな感じがまた、ずきゅーんって来た!
アタシの情けない声が雪原を転がっていく。仲間《ピア》の名前を呼べど叫べど、応える声はなし。びゅおおおぉぉぉっと唸る風の効果音が、寒々しいBGMとコーラスしている。
「なんでみんなハジかれちゃうのよぉぉぉっ?」
仲間《ピア》たちと協力して、このステージの4つのミッションのうち、3つはどうにかなった。でも、ラストのここ、雪山エリアはヤバすぎる。トラップが多いしモンスターも強いし。
バトルに気を取られてたんだ。雪男っぽいモンスターに手こずった。どうにか倒せそうと思ったときにはもう遅くて、崖の突端がビシビシ不穏な音を立てていた。
危ない!
と判断したアタシはとっさに空中浮遊の呪文を自分にかけたけど、ほかのみんなは飛べない。悲鳴を上げる間もなく、雪男はもちろん足場もろとも、崖の下に落ちていった。ジ・エンド。
「アタシひとりでどうしろって言うのぉ……」
未練がましくパラメータボックスを確認する。何回確認しても、奇跡が起こるわけじゃないけどさ。仲間《ピア》のみんなは「崖のトラップによる戦闘不能」、ステージ追放っていうペナルティは発動済み。せっかく、あとちょっとでクリアだったのに。
もうやだ最悪。ハイエストクラスともなれば、チートでしょーってくらい強力なボスはいるわ、1発アウトのトラップはゴロゴロしてるわ、戦闘不能でハジかれちゃうケースが多すぎる。
まあ、じっとしてても仕方ない。アタシはみんなが落ちてった崖に手を合わせて、そこから離れることにした。南無~。
ほんの少し斜面を登ったら、雪山のてっぺんに着いた。白銀に輝くフィールド。BGMも変わったし、今からまさにボス到来! みたいな気配がありありなんですけど。てか、こんなにラスボスに近付いてたのね。残念すぎる。
アタシは岩陰に隠れて、ため息が止まらない。1人で戦えるわけないしさぁ。アタシ、そこそこ上級とはいえ、か弱い魔女っ子だよ? 割と高度な攻撃魔法は使えるけど、物理攻撃には激ヨワだよ?
というか、真っ白い景色の中にひとりぼっちって、いくらゲームの中でも寂しすぎる。もう棄権しちゃおっかな、このステージ。
そのときだった。
声が聞こえてきた。
「どうしてなの? 何で……アイツの意識、ここにいるんじゃなかったの!?」
女の人だ。声の感じからいって、この人、ゲーム内のキャラじゃない。プロの声優さんのしゃべり方じゃないもん。間違いなく、ユーザが操ってるアバターだ。
でも、ちょい待ち。ここ、交流ポイントじゃないんだよ。アタシの仲間《ピア》じゃない人と鉢合わせって、あり得ないんですけど。
もう1つ、声がした。男の人の声だった。
「落ち着きなよ。このあたりのプログラムに乱数が見られたのは、確かなんだろう?」
えーっと。
場違いなこと言ってもいいでしょうか?
いいよね。はい、正直にいきます。
めっちゃ好みの声、来たぁぁぁっ! ヤバいって、これはーっ!
柔らかいんです、彼の声! じゅわっと鼓膜に染み入るみたいに。それでもって、どっちかというと細いんです。しなやかで、伸びがあるんです。透明感があるって言ってもいいですね、うん!
プロかも、この声。地声より低くして、キャラに合う声を作ってるって感じ。深刻そうな感じがまた、ずきゅーんって来た!
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