きみと駆けるアイディールワールド―緑風の章、セーブポイントから―
バトルが終わるときはいつも唐突だ。ラフさんの剣がジャオの角を叩き折った。その瞬間だった。
しゅぱっ! ヒットポイントが尽きたジャオが青い光になって消えた。
オート登録してる勝利のアクションで、アタシは跳びはねた。ニコルさんが口元に触れながら、ふふっとセクシーに笑う。シャリンさんが髪を払って、ラフさんは双剣を掲げて。トルイくんが親指を立てて、オゴデイくんがお辞儀をして。
――パリッ――
――バリバリッ、ビシッ――
ディスプレイに、砂嵐みたいなノイズが入った。今まででいちばんハッキリ、データがひずんだ。
「ななな何が起こったんですか、今の!?」
アタシが出した大声がバリバリに割れて聞こえた。ニコルさんのローブをひるがえると、緑色の粒子が弾け飛んだ。いきなり何が起こったの?
シャリンさんが……違う、シャリンさんのユーザさんが、張り詰めた声で叫んだ。
「アサキ、ここにいるのっ!?」
――バリッ、ビシッ――
――ザ、ザザザッ――
「ねえ、アサキ! どこなのっ!?」
フィールドのグラフィックが荒れる。トルイくんとオゴデイくんの動きがフリーズしてる。そういえば、BGMも鳴ってない。
「アサキっ!!」
それがラフさんの魂の名前ですか? ゲームの中にとらわれているはずの彼の、本当の名前?
青空、水辺、バトルの後の土埃、緑の濃い草。この一場面のどこかにいるの? どこにいるの?
「アサキっ!!」
悲痛な声が、不意に、クリアに聞こえた。BGMが鳴り始める。トルイくんが尻尾を振った。オゴデイくんが弓をしまった。
異変が去っていった。
「シャリンさん、あの……」
「次のチャンスに持ち越しね」
かすれた声で、シャリンさんはつぶやいた。
しゅぱっ! ヒットポイントが尽きたジャオが青い光になって消えた。
オート登録してる勝利のアクションで、アタシは跳びはねた。ニコルさんが口元に触れながら、ふふっとセクシーに笑う。シャリンさんが髪を払って、ラフさんは双剣を掲げて。トルイくんが親指を立てて、オゴデイくんがお辞儀をして。
――パリッ――
――バリバリッ、ビシッ――
ディスプレイに、砂嵐みたいなノイズが入った。今まででいちばんハッキリ、データがひずんだ。
「ななな何が起こったんですか、今の!?」
アタシが出した大声がバリバリに割れて聞こえた。ニコルさんのローブをひるがえると、緑色の粒子が弾け飛んだ。いきなり何が起こったの?
シャリンさんが……違う、シャリンさんのユーザさんが、張り詰めた声で叫んだ。
「アサキ、ここにいるのっ!?」
――バリッ、ビシッ――
――ザ、ザザザッ――
「ねえ、アサキ! どこなのっ!?」
フィールドのグラフィックが荒れる。トルイくんとオゴデイくんの動きがフリーズしてる。そういえば、BGMも鳴ってない。
「アサキっ!!」
それがラフさんの魂の名前ですか? ゲームの中にとらわれているはずの彼の、本当の名前?
青空、水辺、バトルの後の土埃、緑の濃い草。この一場面のどこかにいるの? どこにいるの?
「アサキっ!!」
悲痛な声が、不意に、クリアに聞こえた。BGMが鳴り始める。トルイくんが尻尾を振った。オゴデイくんが弓をしまった。
異変が去っていった。
「シャリンさん、あの……」
「次のチャンスに持ち越しね」
かすれた声で、シャリンさんはつぶやいた。