きみと駆けるアイディールワールド―緑風の章、セーブポイントから―
○カルマを背負う者?
ニコルさんのピコハン発言でテンション上がっちゃって、魔力の消費量なんて計算せずに、ガンガン押しまくった。おかげで、今回のボス戦はほんとに早かった。スピーディクリアボーナス、いただきました♪
バトル終了の直後、シャリンさんが席を外した。現実側の誰かに呼ばれたらしくて。
「え、何よ? 今これから? ちょっと待って……わかったわ」
ため息が聞こえた。
「シャリンさん、忙しいんですか?」
「家に帰れてないのよ、最近。いつも、職場の仮眠室からログインしてるの」
「うわぁ、無茶だー。そんな状況なのに、無理やりインしてるんですね」
また、ため息。
「本当は1日じゅうでもピアズに入っていたい。1日4時間なんて制限が鬱陶しい。ちょっと細工してみたけど、この規約を突破するのは無理だったわ。アイツの命がかかってるっていうのに」
それだけ言って、シャリンさんがリップパッチの通信を切った。ログアウトしてないから、アバターはフィールドに残ってる。ニコルさんは、動かないシャリンさんとラフさんを見つめた。
「現実のシャリンも、ラフの体のそばにいるんだよ」
「介助してるんですか?」
アタシの口から、するっと「介助」って言葉が出た。介助というのは、体の不自由な人の身の回りのお世話をすることだ。看護師を目指してるアタシにとっては、とても身近な言葉。
「ルラちゃんも、もしかしてシャリンに近い立場の人なのかな?」
ニコルさんが現実世界のアタシのことを少し察したみたい。そうなんですよって話してみたかったけど、個人情報の公開は厳しく規制されてる。ピアズの決まり事や倫理を刷り込まれたAIであるチャガタイさんが、アタシたちの会話をさえぎった。
「見事な戦いぶりだったぞ、ルラ!」
笑顔の白い牙が、きらーん☆ と光る。たくましい腕がアタシのほうへ伸びてきて、問答無用で肩を抱き寄せられた。
「ちょっ、な、何ですかっ!?」
「この戦が片付いたら、嫁に来ないか?」
「どーしていきなりそうなるんですか!」
「オレは勇敢な女が好きだ」
「シャリンさんのほうが強いし!」
てか、ニコルさん、笑ってないで助けて! チャガタイさんもカッコ悪くはないけど、アタシのタイプではないんだってば!
バトル終了の直後、シャリンさんが席を外した。現実側の誰かに呼ばれたらしくて。
「え、何よ? 今これから? ちょっと待って……わかったわ」
ため息が聞こえた。
「シャリンさん、忙しいんですか?」
「家に帰れてないのよ、最近。いつも、職場の仮眠室からログインしてるの」
「うわぁ、無茶だー。そんな状況なのに、無理やりインしてるんですね」
また、ため息。
「本当は1日じゅうでもピアズに入っていたい。1日4時間なんて制限が鬱陶しい。ちょっと細工してみたけど、この規約を突破するのは無理だったわ。アイツの命がかかってるっていうのに」
それだけ言って、シャリンさんがリップパッチの通信を切った。ログアウトしてないから、アバターはフィールドに残ってる。ニコルさんは、動かないシャリンさんとラフさんを見つめた。
「現実のシャリンも、ラフの体のそばにいるんだよ」
「介助してるんですか?」
アタシの口から、するっと「介助」って言葉が出た。介助というのは、体の不自由な人の身の回りのお世話をすることだ。看護師を目指してるアタシにとっては、とても身近な言葉。
「ルラちゃんも、もしかしてシャリンに近い立場の人なのかな?」
ニコルさんが現実世界のアタシのことを少し察したみたい。そうなんですよって話してみたかったけど、個人情報の公開は厳しく規制されてる。ピアズの決まり事や倫理を刷り込まれたAIであるチャガタイさんが、アタシたちの会話をさえぎった。
「見事な戦いぶりだったぞ、ルラ!」
笑顔の白い牙が、きらーん☆ と光る。たくましい腕がアタシのほうへ伸びてきて、問答無用で肩を抱き寄せられた。
「ちょっ、な、何ですかっ!?」
「この戦が片付いたら、嫁に来ないか?」
「どーしていきなりそうなるんですか!」
「オレは勇敢な女が好きだ」
「シャリンさんのほうが強いし!」
てか、ニコルさん、笑ってないで助けて! チャガタイさんもカッコ悪くはないけど、アタシのタイプではないんだってば!