ハロー、マイファーストレディ!
「真依子先輩、352号の松波さんのガーゼ交換、頼んでもいいですか?」
「了解。すぐに行くね。」
ナースステーションに戻ると、皆藤さんが申し訳なさそうに手を合わせる。私は二つ返事で、すぐに必要な備品をトレイに用意しはじめた。
「すいません、真依子先輩に雑用ばかり頼んじゃって…」
準備をする私の背後から皆藤さんが申し訳なさそうに声を掛ける。その声に、私は笑って返した。
「いや、こちらこそ申し訳ない。みんなに迷惑掛けちゃって。特に、皆藤さんは担当の患者さん増えてるし。」
「何言ってるんですか。先輩がフリーになってから、むしろ仕事は減りましたよ。みんな喜んでますよ、残業減ったって。」
職場復帰はしたが、当面は特別措置が取られることになった。私の役目は、担当の患者を持たず、病棟内の雑用をこなしたり、緊急事態に対応する、いわゆる“フリー”と呼ばれるポジションだ。
夜勤のシフトには入るが、通常なら週に数回入る外来診察の勤務からは外され、救急外来の当番も免除された。
ちょっとした時の人になってしまった私が、しばらくは外部の人間と極力接触することなく、患者やその家族とも距離を程良く保てるようにという配慮らしい。
「じゃあ、気にせずどんどん顎で使ってよ。」
「そんなこと、できるわけないじゃないですか。私にとっては、いつまでも先輩は神のような存在ですから。」
「そんな、大げさな…」