ハロー、マイファーストレディ!
「この感じだと、娘もきっと乗り気なんだろうな。征太郎、どうする?簡単には断れないぜ。うっかり逆鱗に触れたら、当分やりにくくなる。」

透が早くも断る方策について議論を始める。
この男はこの手の仕事に、いつも抜群の才能を発揮する。
人の心を掴んで、上手く丸め込むのが得意なのか。
昔、同じ様な縁談がきた時には、相手の女の好きそうな男を探してきて、わざと引き合わせ、女を心変わりさせて、難を逃れるという神業を繰り出したこともあった。
この男、とにかく悪知恵が働くのだ。

俺はその問いに、数秒悩んだ後、口を開いた。

「そろそろ、年貢の納め時だろうな。あの計画を進めよう。横井の件もあるから、早いうちに公表できるように。」

俺も来年で35だ。年々、結婚について尋ねられることも増えた。
勝手にマスコミはありもしない恋愛話をでっち上げては、騒いでいる。
実際は仕事に追われてそれどころではないし、俺は恋愛自体に興味はない。
ただ、このまま結婚しないままというのも、面倒事が増えるのだ。
そのため、透と俺は、少し前からある計画を練っていた。

「ああ、あれね。なかなか人選が進まないんだよ。誰かさんの注文が多すぎてね。」

透が面倒くさそうに答えると、大川が途端に心配し出した。計画については、大川にも少しだけ話をしてあった。

「坊ちゃん、あの計画って…正気ですか!?いくら何でも、無茶苦茶です。あれを了承してくれる相手なんてそうそう見つかりませんよ。急いで探しても、碌なことになりません。」

大川が止めるのも無理はない。
あの計画には、相手の人選が最も重要だ。
短期間で、絶好の相手を見つけ出すのは無茶だった。
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