ハロー、マイファーストレディ!
思わず詰め寄る私に、征太郎は当たり前のように淡々と説明を続けた。
「婚約を発表する前に、もう一度くらいスクープが必要だという話になった。」
「スクープが必要って、そんな勝手に…」
「順調に交際していることをアピールした上で、婚約を発表する。その方が、世間も盛り上がるし、信憑性も増すだろう。」
堂々と悪びれることなく言い放つ婚約者を前に、返す言葉もなくため息を落とす。
「忙しい執務の合間を縫って、わざわざ恋人に会いに来る、まるで誂えたような美談だ。」
「まあ、そうだけど。」
「悪いが、帰りは俺がタクシーを拾うところまでつきあってもらう。」
「え、まさか、私も一緒に写るの?」
「ああ、名残惜しく見送りに出てきた体で頼む。まあ、相思相愛のアピールだな。それにツーショットの方がインパクトが強い。」
「また、私、仕事行けなくなったりしない?」
「そうはならないように、何とかこちらから手を回す。安心しろ。」
「…まあ、見送るだけなら。」
本日の計画の全容を聞いて、私は渋々頷いた。
仕方がない、つきあうか。
納得したと同時に浮かんだ疑問を口にする。
「それにしても、どうして三時間なの?」
「三時間もあれば、“いろいろ”出来るだろう?」
ニヤリと口角を上げたその表情に、下世話な意味を汲み取って、頬が熱くなる。それを見て、征太郎は私に詰め寄って軽く頬を撫でた。
「実際にしても構わないが?」
明らかにからかっていると一目で分かる誘惑の言葉に、頬の熱も冷めて失笑を漏らす。
この男は、私の初な反応が面白くて、からかっているだけなのだ。
事務所で一緒に過ごすうちに、際どい発言や接触にも幾分か慣れて、冷静に対応できるようになっていた。
まさに、“特訓”の成果だ。
「それより、三時間経ったら、また仕事に戻るんでしょ?せっかくなら、夕飯でも食べてけば?私も今からだから。」
「いいのか?それは助かる。今日は予定が立て込んでいて、昼も食べてない。」
「そんなんじゃ、また倒れるわよ。あり合わせだけど、少し待っててて。用意してる間にシャワーでも浴びてきたら?」
「ずいぶんと積極的だな。」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ。時間潰しにテレビでも雑誌でも好きなの適当に見てなさいよ。」
そう言い捨てると、征太郎はぐるりと視線を巡らせて、部屋を物珍しそうに物色し始めた。決していい気分はしなかったが、狭いワンルームのこの部屋で過ごせば、生活のすべてが丸見えになるのはどうせ時間の問題だろう。
「婚約を発表する前に、もう一度くらいスクープが必要だという話になった。」
「スクープが必要って、そんな勝手に…」
「順調に交際していることをアピールした上で、婚約を発表する。その方が、世間も盛り上がるし、信憑性も増すだろう。」
堂々と悪びれることなく言い放つ婚約者を前に、返す言葉もなくため息を落とす。
「忙しい執務の合間を縫って、わざわざ恋人に会いに来る、まるで誂えたような美談だ。」
「まあ、そうだけど。」
「悪いが、帰りは俺がタクシーを拾うところまでつきあってもらう。」
「え、まさか、私も一緒に写るの?」
「ああ、名残惜しく見送りに出てきた体で頼む。まあ、相思相愛のアピールだな。それにツーショットの方がインパクトが強い。」
「また、私、仕事行けなくなったりしない?」
「そうはならないように、何とかこちらから手を回す。安心しろ。」
「…まあ、見送るだけなら。」
本日の計画の全容を聞いて、私は渋々頷いた。
仕方がない、つきあうか。
納得したと同時に浮かんだ疑問を口にする。
「それにしても、どうして三時間なの?」
「三時間もあれば、“いろいろ”出来るだろう?」
ニヤリと口角を上げたその表情に、下世話な意味を汲み取って、頬が熱くなる。それを見て、征太郎は私に詰め寄って軽く頬を撫でた。
「実際にしても構わないが?」
明らかにからかっていると一目で分かる誘惑の言葉に、頬の熱も冷めて失笑を漏らす。
この男は、私の初な反応が面白くて、からかっているだけなのだ。
事務所で一緒に過ごすうちに、際どい発言や接触にも幾分か慣れて、冷静に対応できるようになっていた。
まさに、“特訓”の成果だ。
「それより、三時間経ったら、また仕事に戻るんでしょ?せっかくなら、夕飯でも食べてけば?私も今からだから。」
「いいのか?それは助かる。今日は予定が立て込んでいて、昼も食べてない。」
「そんなんじゃ、また倒れるわよ。あり合わせだけど、少し待っててて。用意してる間にシャワーでも浴びてきたら?」
「ずいぶんと積極的だな。」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ。時間潰しにテレビでも雑誌でも好きなの適当に見てなさいよ。」
そう言い捨てると、征太郎はぐるりと視線を巡らせて、部屋を物珍しそうに物色し始めた。決していい気分はしなかったが、狭いワンルームのこの部屋で過ごせば、生活のすべてが丸見えになるのはどうせ時間の問題だろう。