ハロー、マイファーストレディ！

内容は読まずともすでに分かっているが、一応ページを開いて記事に目を通す。今回は前回とは違い、事実を見たまま記事にしたといった感じだ。前回、征太郎が恋人の存在を認めているためか、私についても“相手は本命の恋人である20代後半の女性”という以外には特に触れられていなかった。
征太郎が私の部屋を訪れた時刻にも、帰った時刻にも間違いはない。たとえ演技であっても、私が見送ったことも、帰り際のキスも紛れもない事実である。
ただ、記事の中には、やたらと読者を煽るような言葉が踊っていた。

“高柳議員が、庁舎を出て急いででタクシーを拾って向かった先は、なんと愛しい恋人の自宅アパートだった”
“たった三時間でも、二人のしっかりと繋がれた手からは、濃密な時間を過ごしたことが伺える”
“人目を気にしながらも、キスを交わした二人─真剣交際の先に待つゴールインは近いかもしれない”

さらに、関係者の話として載せられているのは、記事を裏付けるのにもっともらしい言葉だ。

“すでに高柳氏の父である聡一郎氏にも紹介済みだと聞いている”

煽りに煽って、最後は「近いうちに高柳氏から何らかの発表がありそうな予感がする」と、締めくくっている。

「この、関係者って…」
「これ？大川さんだよ。」
「こういう時の関係者のコメントって、当てにならないと思ってましたけど…」
「今回に関しては違うね。事務所に取材が来たのを、大川さんが直々に対応したからね。嬉しくて、つい余計なこと喋りすぎたみたいだよ。」
「はぁ…」

力なく笑った私を、谷崎さんが笑顔で見つめる。

「盛り上がってきたところで、いよいよ、婚約発表だ。」