ハロー、マイファーストレディ!
難しいと感じているのは、透も同じ様で、なかなか人選が進まない理由を並べ立てる。
「条件はいろいろあるけど、“美人だけど、女ウケする”ってところが一番難しい。だいたい、女ウケしてる時点で、よく見ると大した美人じゃないんだ。女ってのは、やっぱり僻みっぽい生き物なんだな。」
まるで、何かを思い出したかのように、ため息を付いた。
この男は見た目は誠実そうな仮面を被りながら、実は相当な女たらしである。
若い頃から節操なく遊び歩いていたため、おそらく女の僻みや嫉妬の類は知り尽くしているのだろう。
昔は事務所に女が訪ねてきて修羅場になったこともあったが、さすがに最近では落ち着いてきている。
かといって、一人の女に絞っている訳でもないから、単に遊び方が上手くなっただけで、この男もおそらく本気で恋愛をする気など毛頭無いのだろう。
「“好感度の高い職業”ってのも意外とネックだな。モデルや女優だと派手すぎるし、OLだと地味すぎて話題にならない。 だとすると、専門職みたいなのがいいのかと思って、医者とか教師とか当たってみたけど、結構プライド高そうな女が多くてね。…エロかったけど。」
透はそう言うと意味深に笑った。
こいつ、計画にかこつけて、結構遊んだな。
そう思ったが、口には出さずに頭の中で考えを巡らせた。
今は透の猥談に付き合っている暇はない。
…女ウケする美人で、専門職の女。
そのキーワードを頭の中で結びつければ、ある一人の女の顔が浮かんだ。
あの女なら、全て条件をクリアしているかもしれない。
そして、どうせなら仮面が不要な相手がいい。やはり、ずっと猫を被り続けるのは疲れるのだ。
俺の本性を見ても驚かず、堂々と言い返してきた姿を思い起こせば、密かに期待してしまう自分がいた。
いずれにしても、有力な候補が居ない今、検討の価値はある。
「透、一人だけ思い当たる女がいる。森ノ宮記念病院の看護師だ。名前は…確か、真依子とか言ったな。一週間、いや5日で徹底的に調べろ。」
谷崎に向けて指示を出すと、俺は一人ほくそ笑んだ。