ハロー、マイファーストレディ!
征太郎から近いうちだと聞いていたため、割と冷静にその宣告を受け止める。
「あまり時間が無いんですよね。」
「そう。タイミング的に来週がベストなんだよね。それを逃すと、半年先。まあ、個人的にはこのまま半年いちゃいちゃスクープが続いても構わないけど。」
「…さすがに、みんな飽きますよ。」
「はは。鉄は熱いうちに打たないとね。」
谷崎さんの説明によると、発表するのは来週水曜日。高柳征太郎と事務所の連名で、マスコミ各社にファックスを流す。
事前に党幹部や重鎮議員への報告が必要なため、征太郎はすでに今日から、路上キススクープの釈明を兼ねて、婚約の報告に巡っているとのこと。不祥事ではないものの、流石にあの破廉恥写真はお詫び行脚の対象になるらしい。
「ファックスを流した後は、征太郎が一人で会見する。」
「私は通常通り仕事に行っても?」
「構わないよ。会見で、名前と写真は公開するから、またマスコミが病院に来るかもしれないけど、対応するための専用のガードマンをこちらから派遣することで病院に納得してもらった。」
「行き帰りで声を掛けられたりしたら?」
「何も話は出来ないって、何とか切り抜けて。真依子ちゃんの情報はこっちから小出しにするから、勝手に喋らないように。あまりにしつこいようなら、ボディガードを手配するよ。」
「分かりました。あんまり、邪険にしない方がいいですよね。」
「そうだね。まあ、とりあえず、基本笑って対応して。」
「それが、私にとっては一番難しいです。」
「ははは、そう?俺は、真依子ちゃんの笑顔素敵だと思うけどね。特に、この写真なんて最高。」
茶化すように谷崎さんが指さしたのは週刊誌の誌面の隅に小さく掲載された写真。キスの後、うっとりと微笑んで征太郎を見送る私の顔だ。