ハロー、マイファーストレディ!
「それと、もう一つ。」
「まだ何かあるんですか?」
「ああ、征太郎が君のために特別に手配したものが。」
「何でしょう?」
「もうすぐ着くと思う。」
何やら思わせ振りな言葉を残して谷崎さんは立ち上がる。
どこかへ電話を掛けると、すぐにルームサービスのコーヒーが運ばれてきた。谷崎さんはそれをドアの前で受け取ると、部屋のリビングボードの上に置く。コーヒーはポットに入ったままだ。
「やりましょうか?」
「いや、そのまま待ってて。」
私の申し出に、彼は首を横に振った。
その時、再び来訪者を知らせるチャイムが鳴った。
「お客様だ。」
「どなたですか?」
何気なく訪ねた私に、彼は驚くべき事実を告げた。
「君の、叔父さんだ。」
谷崎さんがドアを開けて、「お待たせしました」と中へ人を招き入れる。
呆然と部屋の真ん中で立ち尽くす私の前に現れたのは。
「やあ、真依子ちゃん、久しぶり。」
七年振りに見た、父によく似た、とても柔らかい笑顔だった。
「…ご無沙汰しています。」
驚きのあまり目を見開いた後で、ぎこちなく笑い返した私の頭を、叔父は目を細めながら優しく二度ポンポンとたたいた。
「真依子ちゃん、とてもきれいになったわ。お義姉さんに、よく似てる。」
叔父の傍らには、目に涙をためてこちらを見る叔母の姿があった。
「とりあえず、こちらへ。」
谷崎さんに促されて、三人でソファへと掛ける。
敏腕秘書の手によって、絶妙なタイミングでコーヒーはサーブされた。