ハロー、マイファーストレディ!

「時間がないから、話は単刀直入にしよう。」

バンケットルームの脇にある小部屋のうち、一番奥にある部屋へと通されて、小さめの応接セットに揃って腰を下ろすと、朝川は直ぐに切り出した。
おそらくは控え室として借りている部屋だろう。テーブルの上には水差しとグラス、おしぼりが控えめに置かれていた。

「ええ、先生は今日の主役ですから、あまり長くは抜けられませんよね。お疲れでは?」
「ああ、本当に疲れたよ。君とゆっくり政策について議論する方が何百倍も有意義だというのに、それだけでは生き残れない。政治家というのは本当に因果な商売だね。」

ため息をつく朝川に、同意するように微笑んで、俺は先に自分の用件を切り出した。

「お話を聞く前に、私から一ついいですか?」
「ああ、どうぞ。」

まるで、聞かれる内容を知っているかの如く余裕の笑みを浮かべる朝川に尋ねる。

「先生は、今度の総裁選には……」
「もちろん、出るつもりで準備している。」

俺の疑問に被せるように、自信満々に宣言した朝川は、そのまま話し続ける。

「推薦人は何とか集まりそうだ。地道に政策議論を重ねてきた仲間たちがいるからね。もっとも、これでも苦手な交渉事や資金集めも頑張ってきたつもりなんだが。」
「さすがは、朝川先生ですね。」

にっこりと微笑めば、対する朝川の細い瞼がピクリと動いた。

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