ハロー、マイファーストレディ!
部屋の扉がガチャリと音を立てて閉まる。
それと同時に、自分の中に押しとどめていた苛つきを一気に解放させた。
真依子の手首をやや強引に掴んで、部屋の中央へと引き入れる。
いつかのように、豪華なスイートルームではない。数歩歩けば、すぐにダブルベッドに辿り着く。
俺の苛立ちが伝わったのか、真依子は少し戸惑いながら、ベッドサイドに立ち尽くしていた。
「隙が有りすぎだな。あんな男に簡単に迫られるなんて。」
「あなたの後援会の世話役だって言うから、ちゃんと挨拶しなきゃって…」
「のこのこ人気の無いところに付いていったのか?」
どうして責められているのか分からない真依子は、眉間に皺を寄せて無言の抵抗を見せる。
睨んでも、怖くない。
むしろ、俺を煽るだけだ。
「お仕置きが必要だな。」
俺の苛立ちの原因は、真依子には分からないだろう。
当然だ。だって、俺ですら本当のところは何に苛立っているのか分からないのだから。
ただ分かっているのは、この苛立ちを彼女にぶつけるのはお門違いだということだけ。
それでも、止められなかった。
強引に真依子の後頭部に手を回して。
逃げられないように無理矢理唇を奪う。
「んんんっ、…ちょっと…」
重ねられた唇の隙間から、真依子が必死に抵抗する声が漏れる。
俺はそれにも構わずに、同じく抵抗する彼女の両腕を片手で拘束して、背後のベッドへと押し倒した。
脳裏に、先ほど真依子の手にキスを落とした、長谷川の満足そうな顔が浮かぶ。それを打ち消すように、彼女の手をきつく握りしめた。