ハロー、マイファーストレディ!
「嫉妬に駆られて、ついに最後までしちゃったってとこ?」
「…まだ、何も言ってないぞ。」
タクシーで議員会館へと戻ると、先に戻っていた透に、ニヤニヤとした顔で出迎えられた。
「えー、そういうことだろう?どうだった、処女の抱き心地は?」
完全に勘違いしている透に、無駄だと思いつつ弁解を試みる。
「だから、…抱いてない。」
「あんなに目立つ場所にキスマークを付けておいてか?」
「途中で急に冷静になった。」
「途中で?よく止められるな。俺なら無理だわ。そりゃ、紳士じゃなくて、単なるヘタレだ。」
透は、まるで信じられないという顔をして固まっている。
あの後、冷静になった俺は真依子をすぐに解放した。少し頭を冷やしてくるから、ロビーで待っている透に送ってもらうよう言い残して、部屋を出る。その後は、ホテルの最上階にあるラウンジでしばらく時間を潰した。
一気に冷たいアイスコーヒーを飲み干しても、その熱はなかなか引かなかった。頭の中に何度も真依子の艶めかしい姿が甦る。結局、俺は頭を冷やすのに三時間近くを要した。
その間に、真依子は俺の残した言葉に素直に従ったのだろう。ロビーに現れた真依子の、服では隠しきれない場所に付けられたキスマークを、目ざとい透が見逃すはずもなかったという訳だ。
「…何とでも言え。」
「真依子ちゃんも生殺しだったんじゃねえの?送ってった時、目が虚ろだったから、俺はてっきり…」
「ああ、たぶん真依子もその気になりかけてた。」
「かわいそうに。」
直に胸に触れたとき、彼女の体はすでに熱く火照っていた。
胸元に口づければ、明らかに拒絶とは逆の身じろぎを繰り返す。
俺が途中で止めなければ、真依子はあのまま俺を受け入れただろう。