ハロー、マイファーストレディ!
「冷静になったら、怖くなった。」
「好きだと自覚した途端、抱くのが怖くなるなんて、とんだ純情男だな。」
観念したように呟けば、親友は呆れたように俺を見下ろしていた。
改めて他人の口から聞かされて、自分の中ではほぼ疑いようのない事実になっていることを、もう一度確認せずには居られなかった。
「これって、やっぱり…そうなのか?」
「何だ、まだ認めないつもりか?俺はとっくに気づいてたけど。」
さらに呆れた顔でため息を漏らす透を恨めしそうに見つめると、無慈悲にも追い打ちを掛けてきた。
「ついでに言うと、巧己だって気づいてる。」
「長谷川まで?あいつに弱みを握られるのは、まずいな。」
「平気だろ。あれから、何年経ってると思ってるんだ?お互い、いい歳をした大人だろう。だいたい、あの頃も対抗心を燃やしていたのは、征太郎に相手にしてほしかったからだ。さっきも言ったけど、いい加減、昔のことは水に流してやれよ。」
「無理だ。あれは、耐え難い屈辱だった。」
再度、長谷川との和解を提案する透にばっさりとノーを突きつける。
透は、今日何度目か分からないため息をこれ見よがしに吐いた。
「たかが、付き合ってた女が長谷川に乗り換えただけだろう?そもそもお前も本気でも何でも無くて、適当に付き合ってただけの癖に。」
「それでも、卒業するまで寝取られ男だと影でコソコソ言われたのは忘れもしない。あれ以来、近寄ってくる女には人一倍気をつけるようになった。」
女というものは、まるで信用の置けない存在だと知った。俺の家柄目当てに近寄ってきたくせに、よりいい条件の男が現れれば手のひらを返したように離れていく。
本気で無かったからこそ、こんなにも屈辱的で、腹立たしいのだ。