ハロー、マイファーストレディ!

「お前がこれまでまともな恋愛が出来なかったのは、半分は巧己のせいかもな。」
「ああ、そうかもしれない。父親の愚行を散々見せられてきたせいでもあるけどな。ますます、あいつに対しては嫌悪感しか湧いてこない。」

透が導き出した結論に、力強く頷いてみせる。
それを見て、透がニヤリと笑みを浮かべた。

「でも、裏を返せば、半分は巧己のお陰な訳だ……真依子ちゃんに出会えたのは。」
「何が言いたい?」
「結果オーライだろう?巧己のお陰で、異常なまでに女性関係がクリーンな政治家として名を馳せて、おまけに初めて本気で好きになった女と結婚できるんだ。少しは巧己にも、感謝してやれ。」

透の無茶苦茶な理論に、反論したくても出来なかった。

本気で好きになった女。 
思い浮かぶのは、俺をまっすぐに見つめる真依子の純粋で美しい瞳。
その視線を、ずっと俺に向けさせておきたいとすら思う。
そして、艶めかしく乱れたベッドの上の真依子がいつまでも脳裏に焼き付いて離れない。
あのまま、朝まで抱き潰してしまえていたら、俺は少しは楽になれたのだろうか。
降って湧いたように突然自分の中で芽生えた新しい感情に、思わず頭を抱えた。


「俺は、悪くないと思うよ。そういう征太郎も。」

うなだれた俺に、静かに投げかけられたのは、最も信頼の置ける男の言葉で。

「まあ、せいぜい悩めよ、恋愛初心者。」

明らかに俺の置かれた状況を見て面白がっている、20年来の親友の言葉だった。
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