ハロー、マイファーストレディ！
会話を交わしている間に、痺れを切らしたマスコミが部屋のインターホンを押したらしい。その音を聞くと、征太郎は急に心配したような声で小さな子供に言い聞かせるように話し始める。

「いいか？しばらく危ないから、外には出るな。分かったな？職場にもこちらから連絡する。必要なものがあれば、何とか届けさせる。危ないから、絶対に外には出るなよ。」
「うん、分かった。しばらく買い置きしたものがあるから大丈夫よ。それより……」
「俺の方は大丈夫だ。何とかカタを付けるから、心配するな。」
「でもっ……」

突然のことに取り乱す私を、落ち着けるために、征太郎は大きく深呼吸してから、ゆっくりと私の名前を呼んだ。

「真依子、」

相変わらずインターホンが鳴り響く中でも、その瞬間だけは、彼の言葉以外耳に入らなかった。

「君のことは、絶対に守る。」

不安で揺れる心が、ピタリと静止した。

「……俺の政治生命を賭けてでも、誰のことも犠牲にはしないと誓う。だから絶対にいいと言うまで、外に出るなよ。」

力強く言い放たれた一言を最後に、通話は切れた。
顔なんて見えるはずないのに、私の閉じた瞼の裏には今までで一番優しく微笑んだ彼の顔が浮かんでいた。
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