ハロー、マイファーストレディ!
□ 未来を選ぶ勇気
「もしもし!?真依子、今すぐ助けに行くから待ってなさい!!」
電話越しに鳴り響くインターホンを聞くなり、電話を掛けてきた瞳が叫ぶ。
私は「とりあえず、落ち着いて」と彼女をなだめた。
自宅アパートの周りに続々と集まってくるマスコミ。前回の教訓なのか、早々にアパートの管理会社から「周囲の迷惑なので、何とかしてください」と連絡があった。
私だって何とかしたいのは山々だ。一度だけ、勇気をだして「ご近所のご迷惑になりますので」と帰ってもらえるようインターホンごしに丁重にお願いしてみたが、むしろ火に油を注ぐ結果だった。確かに、私は部屋の中にいますよーって言っているようなものだ。以来、鳴り止まぬインターホン。
もう二度と出ないと決めて、この際だからいつも通りの生活を送ってやると、朝食を食べ、洗濯をした。今日は部屋干しになってしまうが仕方ない。
洗濯物を干し終わった頃には、皆藤さんから電話があった。夜勤明けにロビーのテレビで報道を見て、私が今朝出勤していないのを知って連絡をくれたらしい。
また、しばらく迷惑を掛けることを詫びると何故か怒られた。
「仕事より自分のことを考えてください!」
「いいですか?うっかり窓とか開けちゃダメですよ?」
「食料ありますか?あー、心配だ、よく先輩食べなくても大丈夫とか言って、忙しいときお昼抜いてるし……」
心配されているというより、責められている気がするのは気のせいだろうか。でも、彼女なりに精一杯私を気遣う気持ちが伝わってくる。全てに「ありがとう」と返すと、彼女は不安そうな声で「先輩、またすぐ戻ってきますよね?」と尋ねる。私はいつ戻れるかなんてまるで分からなかったけれど、明るく「うん」と返して電話を切った。