ハロー、マイファーストレディ!
私に出来ることがあれば、証言なり何なり協力させて欲しいと願い出れば、彼は安心したようにひとつ息をつく。
「あなたなら、きっとそう言ってくださると、私は思っていました。あなたのお父さんは、誰よりも優しく、人を思いやれる人だった。それでいて、強く、信念のある人だった……今でも、どうして彼があんな決断をしたのか、本当に不思議でならない。本当に、本当に、今でも悔しくて、私は……」
涙を必死に堪えながら言葉を紡ぐ彼に、私なりにたどり着いた答えを伝える。
「確かにあの時の父は追い詰められていたんでしょうけど、今になって思うんです。あの選択で父は私のことを守ろうとしたのかもしれないと。」
騒動を長引かせれば、あるいはこのまま捜査が進んで自分が犯罪者になれば、娘の人生に良からぬ影響を与えてしまうと、父は考えたのだろう。
今の私ならば理解できる、大切なものを守るためには手段など選んでいられないことが。
「それでも、お父さんには私との未来を選んで欲しかった。」
不覚にも、私の頬に一筋の涙が伝った。
それは、電話の向こう側の大川にではなく、ほんとうは父に言いたかった言葉だ。
「そうですね。私も、彼はあなたのためにもそうすべきだったと心から思います。だから、あなたには村雲君の分も後悔の無いように生きて欲しいんです。」
大川さんは穏やかな声で囁いた。
まるで、我が子に語りかけるように、優しく、慈しむような声で彼は語り続けた。
「これから、私がお願いすることは、あなたにとっては酷なことかもしれない。それでも、真依子さん、私はあなたにも未来を選んでほしい。」
過去は決して変えられないかわりに。
未来はいくらでも変えることができるのだ。