ハロー、マイファーストレディ!
沢山のカメラとマイクを前に、私は大きく深呼吸を一つしてから、ゆっくりと頭を下げて一礼する。
「初めまして、内海真依子と申します。」
名前を名乗っただけで、沢山のフラッシュが目の前で光る。正式に取材を受けるのは、これが初めてだ。
事務所の応接室兼会議室は、入室を各社記者とカメラマン一名ずつに限定してもらったにも関わらず、大勢の人で溢れかえっていた。
「今日、皆さんに私がお話したいのは、他でもない、今朝から報道されている高柳征太郎さんの収賄疑惑についてです。」
ざわつくマスコミを前に、出来るだけ正確にこの1週間で起こったことを伝える。
突然現れた男に、とある復讐を持ちかけられたこと。
征太郎に相談した後に、彼の秘書を通して相手と何度かやり取りしたこと。
最終的には、秘書が相手と会って復讐の件は断ったこと。
その時に、封筒でお金ではなく、カセットテープを渡されたこと。
報道で賄賂を渡したと言っている男が、私に復讐を持ちかけてきた男であること。
ひとつひとつを丁寧に、まっすぐ記者とカメラを見つめながら話した。
証拠として、事務所に残されていた、久住の名刺と、カセットテープを出す。
もちろんのことながら、記者から次々に質問が投げかけられる。
ほとんどが、私が持ちかけられた“復讐”についてだ。