ハロー、マイファーストレディ!
さらに、私に自信を付けさせるためか、彼はこんなことを言った。
『何も恐れることはありません。真依子さんは、本当のことを話すだけです。どんなに緻密に練り上げられた嘘でも、真実には勝てはしません。』
その言葉に、少しだけ不安は晴れたものの、再び別の不安が押し寄せる。
『私と彼の関係こそ、嘘だらけですよ。』
本当のことを話すと言いつつも、私と征太郎には簡単には明かせない、最高に後ろめたい事実が一つだけある。どんなに私の気持ちが変化しようとも、お互いの利害のために契約を交わした二人であることに違いは無い。
『たとえ、きっかけはそうだったとしても。先生と、真依子さんが出会って、今日まで過ごしてこられた日々に、嘘はありません。』
慈しむように優しく向けられた視線の先には、二人で焼きそばの屋台の前で撮った写真が飾られていた。おそらく、支援者の誰かが届けてくれたのだろう。
大切そうに、そのツーショット写真をフォトフレームにおさめる大川の姿が思いうかんだ。
『経緯はどうあれ、私にはすでにお二人が固い絆で結ばれているように見えますよ。』
そう穏やかに私に諭した大川さんの細められた目を見て、私は純粋に「本当に、そうだったらいいのに」と思った。
彼と、彼を愛する人のために、私に出来ることは全てやろうと、改めて胸に誓う。
こみ上げるすべての感情を必死にコントロールして、冷静にしっかりと言葉を紡ぎ出す。むしろ、ここからが本番だ。
「10年前に父と母を失ってから、私はずっと政治家に対して嫌悪感を抱いて生きてきました。」
私が口にしたのは、この10年間密かに抱え続けた思いだった。