ハロー、マイファーストレディ!

「父が自殺を図ったことは、おそらく最終的には父自身が決断したことで、揺るぎない真実だというのに。当時の私は、まるで両親を殺されたような気持ちになっていました。政治家なんて、自分の私利私欲のために、体よく嘘を吐いている詐欺師同然の職業だと勝手に思いこんでいたのです。」

政治家は皆一様に、悪人だと思い込んでいた日々。征太郎を詐欺師だと罵ったあの日。まだたった数ヶ月しか経っていないのに、すでに懐かしさすらを感じる。

「ですが、運命の悪戯なのか、単にそういう巡り合わせだったのか、私はある日、高柳征太郎という政治家に出会いました。そして、彼の人柄や仕事ぶりを知るにつれて、私の認識は大きく間違いであったことに気づかされました。」

ここまで話すと、私の口元は自然と緩んだ。軽く微笑みながら、目の前の記者一人ずつと、カメラ一つずつをしっかりと見つめて語りかける。

「私が知る限り、高柳征太郎という政治家は、多くのみなさんが日頃彼に抱かれているイメージ通りの、とても清廉潔白な政治家です。仕事熱心になるあまり、彼がいつも寝食を忘れて頭を悩ませているのは、この国の未来のことです。これは本当の事です。」

この国の未来を本気で憂い、政治家として命を削って働く姿。
強引で冷酷な素顔とは裏腹に、私に触れる手はいつも温かかった。

「もちろん、プライベートでも四六時中あんな紳士的で完璧な立ち振る舞いをしている訳ではありませんが、彼は詐欺師でもなければ、お金に動かされるような人間でもありませんでした。」

そんな、彼のすべてを知ってしまったから。

「今回の件は、すべて私の責任です。彼は、私のトラブルを解決しようとして、巻き込まれたに過ぎません。」

導き出した結論は、自分のすべてで彼の未来を守ることだった。

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