ハロー、マイファーストレディ!
私に出来ることは、すべてやった。
あとは、そっと彼の幸せを祈るだけだ。
それが、たとえ遠く離れた場所でも構わない。

母は、父と運命を共にすることを選び。
私は、彼の元を去ることを選ぶ。

まるで別の選択のようで、根幹は同じなのだ。
あれほど、母のようにならないと固く誓っていた私も、所詮はただの女だったのだ。
恋をすれば他に何も見えなくなる、つまらないバカな女だ。

それでも、いいと今は思った。
いつも父の隣で可憐に笑っていた母を思いだす。
幸せそうなあの笑顔を思い浮かべながら、私は穏やかに微笑んだ。

そして、まだ騒然とするその場から立ち去ろうとした時だった。





────ダンッ

部屋の扉が大きな音を立てて、勢いよく開かれる。
皆のが扉の方へと視線を向けた。


私も、思わず見つめたその扉の先には、



今まで見た中で一番不機嫌な、
高柳征太郎が立っていた。

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