ハロー、マイファーストレディ!
「バカな女だな。俺が本気で惚れた女を手放すわけないだろう。」
言い終わるか終わらないかのうちに、彼にぐいっと腕を引かれる。驚きのあまり、私は彼のなすがまま、彼の腕の中へと収まった。
まずは、自分の耳を疑った。
本気で……惚れた女?
次に、悪い冗談か、それとも何かの策略でお芝居でもしているのかと疑う。
けれども、そのどちらでもないことはすぐに分かった。
「ちゃんと、守るって言っただろう?大人しく待ってろよ。俺のために正直に全部喋るなんて、君は本当にバカだな。」
悪態をつきながらも、私を離さないとばかりに、きつく抱きしめている彼の手が、ほんの少しだけ震えていた。
それに気が付いた途端、私の瞳からは我慢していたはずの涙が溢れ出す。私は彼の胸に顔を埋めたまま、小さな声で「ごめんなさい」と呟いた。
彼は私を抱きしめたままの体勢で、報道陣に向き直り、きっぱりと宣言する。
「婚約破棄はしません。何があっても、彼女と結婚します。」
不機嫌から一転、いつものプリンスの微笑みを浮かべた彼と私の背中に、また一斉におびただしい数のフラッシュが浴びせられた。