ハロー、マイファーストレディ!
Ⅶ、夢も希望も
★ 高柳家の難題(大川目線)
私には、生物学上の子どもはいない。
それでも、まるで実の息子のように、その成長を見守ってきた存在がふたりいる。
一人は古くからの友人であり、長らく仕事上のパートナーであった男の息子で。
もう一人は、その息子の友人であり、パートナーの男だ。
高柳征太郎と谷崎透。
この二人は、かつての私と友人がそうであったように、この先もお互いに手を取り合い、この世界を渡り歩いていくだろう。
それは、二人が出会った時からおそらく決まっていた、一種の運命のようなものだ。
性格も違えば、人生の目的もまるで別々の二人だが、共通しているところが一つだけある。
複雑な生い立ち故、人生で誰もが当たり前に抱くであろう願いを、最初から諦めていることだ。
愛すべき存在と出会い、恋に落ち、やがて幸せな家庭を築くこと。
それは、彼らが日々追求している仕事のことを思えば、とても平凡で、容易に実現できることだ。
ただ、彼らにとっては、それはまるで非現実的なことであるらしい。
私からしてみれば、彼らが思いついた計画の方が、よっぽど非現実的だ。
人の心というものは、決して計画通りには動かない。
そのことを、彼らに納得させられないことが、私、大川広志にとって、長らく最大の気がかりであった。