ハロー、マイファーストレディ!
私には、墓場まで持って行くつもりの秘密が二つだけある。
ひとつは、高柳征太郎の偽装結婚計画について。
もうひとつは。
高柳聡一郎の“生涯を賭けた恋”についてだ。
私と聡一郎が出会ったのは高校の入学式で、今思いだしてみても、どうして彼と仲良くなったのかは分からない。
ただ、彼が学級委員長に指名されて、どういう訳か、彼が私を学級書記に指名したのがきっかけだったとは思う。
私が彼とよく話をするようになった頃にはすでに、聡一郎の心の中にはいつも千代子さんが居た。
高柳家に勤める住み込みの家政婦。
それが、政界の御曹司の恋の相手だった。
身分こそ違えど、二人は愛し合っていた。
初心だった私は、いつも聡一郎から大胆な色恋の話を聞いて顔を赤くしていたし。
時々、聡一郎の家に遊びに行った時に会う千代子さんは、三歳も年上とは思えないほどにあどけなく笑う、とても可愛らしい人で。互いに見つめ合って言葉を交わす二人は、本当にお似合いに見えた。
それでも、周囲はそんな身分違いの恋を許す訳も無く、二人に別れるように諭した。
そして、聡一郎の高校卒業間際に、千代子さんは屋敷から急に姿を消したのだ。