ハロー、マイファーストレディ!
それから、ずっと何十年も聡一郎は千代子さんを追い求め続けた。
伝手という伝手を辿って、探し歩いて。
なかなか見つからないことに苛立って。
こんなに探しても見つからないのは、千代子がすでにこの世にいないからだと悲観して。
自棄になって、親が勧めるままに最初の結婚をした。
子どもが生まれて、父親になって。
それでも、一人の女がどうしても忘れられなかった。
少しでも似ている女が居ると聞けば、我を忘れて会いに行き。
さみしさを紛らわすように、その女たちと浮気を繰り返す。
人は、高柳聡一郎のことを恋多き政治家と呼ぶ。
でも、実際は違う。
彼は、生涯でたったひとつの恋しかしていないのだ。
そんな彼に、その知らせがもたらされたのは、ちょうど五十歳の時。
愛した女との突然の別れから、三十二年が経ち、政治家としても、一人の男としても成熟の時を迎えた頃だった。
『こちらの高柳先生が、私の母をお探しだとお聞きしまして。』
オドオドとした表情で、事務所を訪ねてきた女性は、ハワイに住んでいる日本人だと告げた。たまたま仕事でハワイへやってきた母の古い知り合いから、一度ここを訪ねるように言われたらしい。