ハロー、マイファーストレディ!
出会ったのは、10年前。
きっかけは、ナンパだった。
当時、まだ17歳の高校生だった私は、隣県にある母の実家で夏休みの1週間を過ごしていて。その日は、姉のように慕っていた大学生の従姉妹とその友達に誘われて、近くの海へ遊びに行ったのだ。
『君、高校生?』
『あっ……そうですけど、何か?』
『いや、かわいいなあと思って。』
『あ、ありがとうございます。』
突然声を掛けられて、少しドキドキしている私に、谷崎は優しげに微笑みかける。その誠実さを装った瞳に、まだ純粋だった私はコロリと騙された。
『でも、ちょっと水着のデザインが大胆すぎるね。それじゃあ、ナンパしてホテルに連れ込んでくれって宣伝してるようなものだよ。』
『こっ、これは……急に来ることになったから、従姉妹が貸してくれて……』
『従姉妹のお姉さんは、あっちでナンパされてる子?』
男が指さした先では従姉妹とその友達が二人連れのイケメンにナンパされていた。従姉妹がアイコンタクトで、今は邪魔するなと語りかけてきたのを見て、私は小さく溜息をつく。それを見て、谷崎はまた甘い誘いを掛けてきたのだ。
『じゃあ、今日は一日一緒に居てあげるよ。男連れなら変な男にナンパされる心配はないから。』
『……お願いします。』
当時の谷崎は東京の有名私学の大学院に籍を置きながら、友達の父親の仕事を手伝っていると言った。その時は、まさかその仕事が国会議員の秘書のアルバイトだとは思ってもみなかった。
丸一日ビーチで紳士的な態度だった谷崎を、すっかり信用しきっていた私は、連絡先を交換して、東京に戻ってからもよく二人で会うようになった。
七つも年上の大人の男。
まわりの友達がしているような恋とは、少し違う特別な感じにすっかり酔っていた私は、今までにないくらいに夢中になった。
付き合おうと、はっきり言われたことは、一度も無かった。
それでも、あの誠実そうな微笑みで私に会いたいと言われれば、おそらく彼も私と同じ気持ちなのだろうと、心を躍らせていた。
おしゃれなレストランで、誕生日を祝ってもらった後、高校生カップルではとても泊まれないような、高級ホテルで彼に処女を捧げた。
ベッドの上でも、谷崎はあの微笑みを崩さずに、私を丁寧に扱った。
会う度に、どんどん好きになっていく。
誘われれば、すぐに予定を空けた。
心も体も全てを明け渡して。
単純な私は、彼にとって恰好の遊び道具だったのだろう。