ハロー、マイファーストレディ!
「俺と、結婚してほしい。」
契約を交わした夜と同じように、彼女に告げる。言葉は同じでも、今回は事務的に伝えるのではない。彼女の目を真っ直ぐに見つめて、気持ちを込めて言った。もう一度、プロポーズのやり直しだ。
彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに思い出したのか、あの夜と同じように俺に問い掛ける。
「どうして、私と?」
あの夜は、眉間に皺を寄せていた彼女も、今は微笑んでいる。俺はあの日と同じ答えを口にした。
「俺の考える結婚相手の条件に、君がピッタリ当てはまるからだ。まず、第一に美人であること。第二に自立した女性で、かつ好感度の高い職業に就いていること。」
それで?と言わんばかりに彼女が俺の瞳を覗き込む。俺はとびきりの条件を付け加える。
「でも、一番重要な条件は、前に言ったのとは少し違う。……心から人生を共にしたいと思える相手であること。俺の人生で初めてだ。誰かをこんなにも手放したくないと思ったのは。」
話している途中に恥ずかしくなって、顔を見られぬようにと、彼女を抱き寄せた。
胸に押し当てられた顔をモゾモゾと動かして、ようやく俺の赤い顔を見上げた彼女が、クスクスと笑いながら尋ねる。
「私をファーストレディにするつもりは、まだある?」
「ああ、もちろん。いつか、きっと。約束するよ。」
当初の計画よりは、ずっと先になるかも知れない。崩壊したイメージを取り戻すのは難しいだろう。それでも、人生の目標だけは見失わないつもりだ。
「私、詐欺師とは結婚しないわよ?」
「前にも言ったが、俺は善良な政治家だ。」
意地悪く笑って首を傾げたかと思えば、俺の返答に今度は弾けんばかりの笑顔を向けてくる。こんなにも無邪気に笑う彼女を見るのは、もしかすると初めてかもしれない。
「いいわ、あなたの計画に協力してあげる。」
彼女のその一言で、止まりかけた計画は再び動き始める。
今度は、握手ではなく、キスと抱擁を証に。
もう一度、彼女の背中を引き寄せて、その唇の温もりを確認した。