ハロー、マイファーストレディ!
「大臣経験は、今後のステップアップに繋がるぞ?」
「急がば回れと言うだろう?」
俺が微笑みながらそう言うと、透は小さく笑い声をこぼして、尚も会話を続ける。
「朝川議員は何て?」
「征太郎君、それじゃあボクみたいに中々出世できないよ、と笑ってた。」
「奴に言われちゃ、おしまいだな。」
「そうかもな。」
ようやく視線を合わせた親友と、クスクス笑い合う。
こんな時間も、また人生には捨てがたい。
「そういえば、もう一人、政界のプリンスの純愛に感化された奴が居たらしいな。」
「ああ、あいつこそ本物の大馬鹿者だな。」
「そんな風に言うなよ。助かったろ、真依子ちゃんと年内に結婚できるんだから。」
「ああ、まあな。」
いち早く真依子と結婚したかった俺が、最初にぶち当たった壁が、披露宴会場の確保だった。式は地元の高柳家所縁の由緒正しき神社でひっそりと挙げることにした。しかし、政財界の重鎮を招く予定の披露宴はそうもいかず、会場は名だたるホテルの大型バンケットルームに限られる。どのホテルも向こう半年は予約が一杯だった。
いっそのこと、先に入籍と挙式のみ済ませてしまおうかと思ったが、このご時世、ひょっとしておめでたなのではと勘ぐられるに違いないと、大川にすぐに止められた。
俺はイメージなどすでに気にしていないが、大川からあらぬ疑いを掛けられて困るのは真依子だと言われれば、素直に従うほかない。
こうして、思わぬ足止めを食らうことになった俺に、救いの手を差し伸べたのは意外な人物だった。
『ご祝儀代わりに、譲ってやるよ。三か月後、グランドクラウンホテルの飛翔の間だ。大安吉日、プレジデンシャルスイートの宿泊付きだぞ。』