ハロー、マイファーストレディ!
「真依子、そのままでいい。」
ベッドから起き上がろうとした私を声で制して、征太郎はまたベッドサイドまで歩み寄る。ベッドに腰掛けると、体を捻って私の顔を見下ろした。
「……体は、大丈夫か?」
いたわるように声を掛けられて、私は眉をひそめて一つ溜息をつく。それを見て、彼は慌てて弁解を始める。
「いや、その……少し無理をさせたという自覚は、ある。」
「少し?」
「いや、かなり……反省はしている。」
下腹部の鈍痛もさることながら、それ以上に体中のあちらこちらが痛い。
先程は寝ぼけていたので気にならなかったが、征太郎が着替えに行った後、体を動かそうとしても思うように動かせないことに、ようやく気が付いた。
反省していると言われたくらいでは、すぐには許し難い。
昨日、衣装を選び終えてブライダルサロンから出てきた私を、征太郎は車で連れ去った。そのまま有無を言わさず、急遽予定を早めてリフォームされたと思しき高柳家の二階に連れて来られて、今日からここで暮らすようにと言い渡される。
そんな無茶なと抵抗した私に、征太郎は真剣な顔でいかにあの安アパートに滞在するのが危険か(人の部屋を渡航禁止地域のように言わないでほしい)説得を繰り返した。
それでも、なかなか首を縦に振らない私を、征太郎は「とにかく今日は帰さない」と強引にベッドに押し倒したのだ。
今更勿体ぶるつもりもないし、とうに覚悟も決めたはずだったのに、突然の展開に私は激しく動揺していた。
そんな私を前に、今度こそ征太郎は一切容赦をしなかった。とても言葉には出来ないくらい恥ずかしいことを繰り返してから、固く閉じた扉をこじ開けるように、やや強引に私の中に押し入ってきた彼を、やっとのことで受け入れた。
そこから先は、まるで熱に浮かされていたかのように記憶が曖昧だ。
いつ寝たのかも分からない。
覚えているのは、切なげに歪められた彼の顔と、何度も耳元で私の名前を呼んだ掠れた声。
そして、耐えがたい痛みと同時に覚えた、何とも言えない充足感だけだ。