ハロー、マイファーストレディ!
神社での挙式には、親族と親しい知り合いのみを招いた。と言っても、私側の出席者は叔父夫婦と、瞳だけで、ほとんどが高柳家の親族だ。挙式と披露宴のため帰国した征太郎の父、聡一郎とも久々に顔を合わせた。
そして……
聡一郎の隣には、凜とした雰囲気を漂わせつつ、控えめに立つ女性──征太郎の母、紀枝の姿があった。
何度招待したいと伝えても固辞していたというお母さんを、最後に説得したのはお父さんだったと大川さんから聞いた。
「真依子さん、私の願いを叶えてくれて、ありがとう。これからも、征太郎のことをよろしくお願いします。」
初めてお会いした神社の控え室で、深々と頭を下げられて、私は慌てて顔を上げてくださいとお願いした。
感謝しなければならないのは、私の方だ。
数ヶ月前の騒動の時に、お母さんが硴野に脅されていたことを警察に証言してくれなければ、征太郎の立場は今のようには回復していなかっただろう。
そして、何より、彼をこの世に産み落としてくれなければ、私が彼に出会うことはなかった。
私はきっと、一生恋をしないまま。
ずっと、暗い過去に囚われたままだっただろう。
「こちらこそ、末永くよろしくお願いします。」
今度は私が深々と頭を下げる。
隣で、一呼吸遅れて征太郎も頭を下げた。
「お母さん、今日はありがとうございます。」
二人揃って顔を上げると、お母さんは目に涙を溜めながら微笑んでいた。涙が落ちるのを必死に堪えるその姿が、とても美しいと感じた。
この日を迎えるまでの、この親子の長く続いた空白の日々を思う。
「おめでとう。」
今日が、新しい親子の始まりの一歩であればいいなと思った。