ハロー、マイファーストレディ!
◆ ボストンから愛をこめて(透目線)
「晩餐会用のアクセサリーは真依子の手荷物の中よ。そっちに着いたら必ず確認してちょうだい。」
「ああ、分かった。急に悪かった。」
「はいはい。間に合って良かったわ。」
二日ぶりに耳にした妻の声を名残惜しく感じながら、通話を切った。
窓の外を覗けば、歓迎のセレモニーの準備が着々と進められている。
ボストンのローガン国際空港の上空には雲一つなく、抜けるような青空だ。
間もなくこの地に降り立つ予定の、日本国政府専用機の尾翼の日の丸も、今日は一段と映えるだろう。
乗っているのは、この春、我が国の内閣総理大臣に就任したばかりの若きリーダーと。
夫の首相就任以来、世界中から注目を浴びることとなった、逞しくも美しいファーストレディ。
俺は三十年来の相棒とその妻を出迎えるために、慌てて階段を駆け下りた。