ハロー、マイファーストレディ!
店内にはまだ数人のスタッフが残っているようだったが、大木瞳の配慮か、VIP用の個室に入るまで誰とも顔を合わせなかった。
差し出されたコーヒーカップを片手に、部屋の隅にあったソファに腰掛けると、早速彼女が口を開いた。
「真依子に近づきたがっている理由を教えて。」
「その理由によっては、協力願えるのかな?」
「まあ、そうね。あの子にとって有益なことなら、喜んで協力するわ。」
さすがは客商売をしているだけあって、愛想よくにこやかに話をする。
類は友を呼ぶというが、この二人に限ってはそうではないらしい。
ただ、その笑顔の中にも、本質を見抜いてやろうという気概が感じられる。
決して、興味本位や好奇心で話を聞き出そうとしているのではない。
友人が今まさに何かに巻き込まれそうになっている事態を冷静に察知し、彼女を俺に近づけるべきか否かを真剣に見定めようとしているのだ。
「友達思いなんだな。」
「長い付き合いだし、色々と世話になってるしね。何だかんだ言いながら、面倒見がいいのよね。職場でも不思議と慕われてるのは、あんな態度でも困ってる人を絶対に見捨てないからよ。私が悪い男に騙される度、助けてくれるのは彼女だしね。」
彼女は少しだけ自虐的に笑ってから、コーヒーカップを口に運んだ。