ハロー、マイファーストレディ!

透のカットをする彼女に、大まかな計画の概要を説明する。
計画は極秘に進めたいが、先の事を考えれば、内海真依子のごく身近な人物とも口裏を合わせておかなくてはならない。
透が調べたところによると、内海真依子にとって親友と呼べるような人物は、この大木瞳だけである。
そして、彼女には真依子の親友でありながら、別の“ある役割”も期待できる。
秘密を共有する人物は最小限に抑えたいので、その点は極めて都合が良かった。

計画を明かすにつれて、大木瞳の目はしだいに驚きで見開かれていく。
彼女が想像していたよりも、計画が突拍子もなかったのか、それとも、壮大すぎたのか。
いずれにしても、驚きの声を上げながらも、軽快にはさみを動かしていくのには変わりない。
どうやら、透が調べたとおり、彼女の腕は確からしい。

「なるほど。“私”込みで、真依子がこの計画に適任ってことね。」

飲み込みが良いのか、的確に自分の役割を汲み取った彼女は、嬉しそうにほほえんだ。

「理解がよくて助かるよ。で、協力してもらえるのかな?」

彼女は少し考えるような間を置いてから、ゆっくりと答えた。
話が終わるのと同時に透のカットを終えて、軽くスタイリング剤でセットしていく。

「私があなたに協力する条件は、一つよ。これから先、絶対に、真依子の意志を尊重すること。彼女を説得する自信はおありかしら?」

大木瞳は、顔では笑顔を作りながらも、まるで俺を試すようにまっすぐに視線を送ってくる。
俺は、彼女の提案に大きく頷いて答えた。

「もちろん。無理強いはしないし、彼女を日本で一番輝いてる女性にする自信があるよ。」

俺は自信満々に約束をした。
この自信は今は根拠のないものかもしれない。
でも、すぐに結果を出して確かなものにするつもりだ。
そうやって、俺は今までこの世界で生きてきたのだ。
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