ハロー、マイファーストレディ！

「じゃあ、一足先に契約成立ね。約束を破ったら、マスコミに全部ぶちまけるから、そのつもりで。」

瞳は、ヘアセットの終わった透の顔をのぞき込むように、首を傾げた。

「お兄さん、格好良くなったから、明日デートしてあげるわ。」
「それは、どうも。」

透がおどけたように笑うと、瞳はにっこりと笑って続けた。
どこかふざけた会話にも、所々真剣な視線が入り交じる。
テンポのいいやり取りに、この二人は結構馬が合うのかもしれないと感じる。

「明日は、真依子とランチの約束があるの。夜勤明けだから、多分遅れてくるけど、夕方には一緒に居るはずよ。」
「我々がそこに、合流しても？」
「ええ、待ち合わせのカフェの場所を教えるから、車で迎えに来て。」
「食事にでも行けば、多少はお近づきになれるかな？」
「それだけじゃなくて、優秀な秘書さんなら、逃げられないように罠を張っておくことなんて容易いんじゃない？」
「おっと、いけない。今日すでに一つ罠を仕掛けておいたのに、すっかり忘れてた。明日に変更しなきゃな。」

小悪魔のように笑う瞳に、透がこれまた嘘くさいプレイボーイの微笑みで答えながら、どこかへと電話を掛けている。


明日こそ、絶対に逃がさない。

俺たちはそのまま、明日のために打ち合わせを始めた。