ハロー、マイファーストレディ!
店の外に出て、透の車を待つわずかな間、計画通りに瞳が忘れ物を取りに店へと戻る。
一緒に戻ろうとして慌てて追いかけた真依子の腰に手を回し、その場に引き留めた。
「ちょっと、なにす…」
「足下がふらついてるぞ。そんな状態で走ろうとするなよ。」
「このくらい、大丈夫よ。」
「そうか、じゃあ、ちゃんとまっすぐ歩いてみろよ。」
「いいわよ。」
酔っているせいか、いつもより簡単に挑発に乗った真依子は俺の手を振り払った。
ちょうど目の前の道路に、透の運転する黒いプリウスが停車した。
それが視界に入ったのか、真依子は車の方へと踵を返し、勢いよく足を踏み出した。
しかし、急に重心を移動したためか、普段とは違う高いヒールのせいか、その瞬間彼女はバランスを崩した。
転びそうになる彼女を慌ててもう一度引き寄せれば、その細い体は簡単に俺の腕の中に収まった。
「おっと、危ない。」
「ちょっと…」
状況が飲み込めたのか、わずかに身じろぎをする彼女を、腕に力を少しだけ込めて、やんわりと拘束して。
落ち着かせるように背中をトントンと叩いてから解放する。
あえて、紳士的に振る舞った。
暗くて彼女の頬の色は分からないが、彼女が恥ずかしさから動揺しているのは分かる。
それを確認して、いつものように張り付けたような笑顔で微笑んだ。
「お手を、どうぞ。」