ハロー、マイファーストレディ!
「気分が悪くなったら、ナースコールで知らせて下さい。」

淡々と点滴の速度とルートを確認し、手元のバインダーに何やらメモを取ってから、最後にちらりと目を合わせた。
その顔の表情は乏しいが、かなりの美人だ。

「ありがとうございます。」

目があった瞬間に、俺はもはや習性のように微笑みかける。大半の女は、これで少しは頬を赤く染めるのだが。

「…カーテン閉めておきますね。」

目の前の女はその微笑に全く反応せずに、そのままカーテンを閉めて去ろうとする。

何だ、この愛想のない女は。

俺は愛想笑いを浮かべたまま、心の中で密かに悪態をついた。


「あっ、いたいた!真依子先輩、ちょっとすみません。」

ちょうどその時、処置室の扉が開いて、もう一人ナースが中へと入ってきた。
真依子と呼ばれた愛想のないナースは、あからさまに眉間に皺を寄せた。

「皆藤さん、声が大きい。」
「すみません。」

後輩とおぼしき若い看護師は謝りながら駆け寄ってきた。
すぐに俺の存在に気が付いたらしく、驚いた様な表情で慌てて「失礼しました」と頭を下げる。

彼女が気にしないようにと微笑んで頷いてみせると、たちまち若い看護師の頬が赤く染まった。

そうだ、これが正しい反応だ。

それを見て無愛想ナースが呆れたような声で問いかけた。
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