ハロー、マイファーストレディ!
□ 平穏な日々を脅かすもの
どうして、こんなことになったのだろうかと考える。
テーブルの上に広げられているのは、一冊の週刊誌。
“政界のプリンス、本命恋人と手つなぎデート!結婚間近との噂も”
やたら仰々しく書かれた見出しに、大きく引き延ばされた白黒の写真。
そこに写っているのは、スーツ姿で微笑む高柳征太郎。
そして、彼と寄り添うようにして手を繋いでいる、
ーーーーー私だった。
私の平穏な日々をぶち壊す出来事は、何の前触れもなく、突然起きた。
いつものように、家を出て病院へと向かう。
日勤の日はいつもこの時間だ。
電車の乗り継ぎがよく、運良く早めに病院に着いた。
すると、朝早くなのに、病院の正面玄関も職員用の通用口も、人だかりが出来ていた。
よく見ると、首からカメラを提げている人が多い。
ああ、また、特別室に有名人でも入院したのか。
経験上、珍しいことではないので、そのまま報道陣の横を素通りして、院内へ入ったまでは、………よかった。
いつもより、私を見る周りの視線が気になる。
職場では極力目立たないようにしているから、同僚達にもじろじろ見られるような覚えもない。
気のせいかと思いつつ、いつもよりさらに俯いて歩いた。
更衣室にたどり着き、着替えをする間も、周りではひそひそと話す声が聞こえてくる。
“え?うそ、あれって…”
“そうよ、まるで別人みたい”
ロッカーの陰からこそこそと見られているような視線も感じたが、あまり気にせずに廊下へと出た。