ハロー、マイファーストレディ!
「これは、あなたに間違いないわね。」

師長に尋ねられ、私は静かに返事を返した。

「はい、間違いありません。」

そう。いくら記事の中身が半分くらい嘘であっても、この写真は本物だ。
写真の中で、私は確かにあの男と手を繋いでいる。
本当は転ばないように「掴んでいる」という方が近いのだが、そんな言い訳は通用しないだろう。

ページをめくると、さらに目を覆いたくなった。

“転びそうになった恋人を、咄嗟に支える高柳議員”

そう解説されている写真は、二人が軽く抱擁しているように見える。
何も知らない人間がみれば、どう見ても親密な関係の二人だ。

「高柳先生とお付き合いしているの?」
「いえ、そういうわけでは…」

ちゃんと説明をしようと口を開けば、背後でガチャリとドアが音を立てた。

「師長、待たせたね。」

ずかずかと部屋に入ってきたのは、この部屋の主である院長だ。
私は咄嗟に頭を下げた。

「内海くん、と言ったね。」
「はい、この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」

一度顔を上げて、謝罪する。
半分でたらめとは言え、病院に迷惑を掛けたことは事実だ。
社会人として、その責任は取らねばなるまい。
状況的に叱責を覚悟して、再び頭を下げようとした時、不思議なことに院長は上機嫌で話し始めた。

< 43 / 270 >

この作品をシェア

pagetop