ハロー、マイファーストレディ!
「ピーンポーン」
先程からもう一体何度目か分からない、インターホンが鳴る。
そのまま、無視を決め込むと、今度は玄関の方から声がした。
「すみません、大崎さーん。お友達の、内海真依子さんについてお聞きしたいんですが。」
遠慮もなく、部屋のドアがドンドンと叩かれる。
先程とは違う記者だ。
どうやって、瞳の部屋まで調べたのか。
私は、インターホンのモニターを睨みつけながら、深いため息を吐いた。
カーテンの隙間から、アパートの前の道路を覗き見る。
そこには複数の記者らしき人影が確認できた。
高柳征太郎の“熱愛宣言”から数時間後、マスコミはその相手についての情報を少しでも掴もうと躍起になっているようだ。
これでは、私が出かけるのはおろか、瞳が帰宅するのもままならない。
私は、あの男がどうしてあんな発言をしたのかさっぱり理解できない。
おそらく、何か他に極秘にしておきたい不都合でもあって、それをカモフラージュするためか何かだろう。
だとしても、ひどすぎる。
もはや、文句を言うくらいではおさまらない怒りが、自分の中に沸々と沸き上がるのを感じた。
その間にも、また容赦なくインターホンは鳴り響く。
全く、だから嫌なんだ。
腹黒く、嘘つきな、政治家も。
無遠慮で、しつこい、マスコミも。