ハロー、マイファーストレディ!
「どうしたの?」
「それが、病棟の山井さん、点滴の指示が出たんですけど、真依子先輩をご指名で。他の看護師には絶対やらせないってごねてて…」
「ああ、山井さんね。」
「ホントに、相変わらず看護師泣かせの血管なんですよ。」
「みんなビビってんのがいけないのよ。」
「そりゃ、ビビりますよ。真依子先輩以外で、無事に針刺せたナース居ないですから。」
「主任は?確か今日準夜だよね?」
「…真依子先輩呼んでこいって。」
「上司の命令とあらば、仕方ないか。救急(ここ)、しばらく頼める?」
「はい。もちろんです。」
「じゃあ、診察室よろしく。さっき、怪我で一人運ばれてくるって連絡あったから。」
後輩の看護師とも、相変わらずの表情で淡々とやりとりをしている。
しかし、その素っ気ない態度の割に、どうやら後輩には慕われているらしい。
そんな風に分析しながら、そういえばと思い出して、先に出て行った後輩を追って出て行こうとする彼女を、慌てて呼び止めた。
「お急ぎのところすみません。あとどのくらいで終わりますか?」
俺の問いかけに足を止めて振り返った彼女は俺ともう一度目を合わせた。
これで、ようやく二度目だ。
やはり、美人だ。
ほぼ完璧なメイクは、まるで雑誌のモデルのよう。ただ、隙がなさ過ぎる。愛想も良くないから、あまり男受けはしないかもしれない。
しかも、会話の通りこの後すぐに病棟に向かおうとしていたところを足止めされたせいか、わずかに不満げな空気を漂わせている。