ハロー、マイファーストレディ!
法案の委員会審議を終えて、政務官室で急ぎの仕事を済ませてから、急ぎ隣県にある事務所へと向かった。
俺の選挙区内にあるその場所へは、都内から車で一時間程度。電車なら30分の距離だ。
電車を使うことも多いが、今日はあまり公にしたくない移動だっため、秘書の谷崎の運転する車で向かった。
車を降りて事務所へ入ると、すぐに公設第一秘書の大川に出迎えられた。
議員秘書と一言に言っても、それにはいくつかの種類がある。
法律などの立案を手助けする政策秘書一名のほかに、公設秘書を二名まで設けることができ、その給与等の費用は国から支給されている。
ほかにも、議員には私費で私設秘書を雇う者が多い。とてもじゃないが、いわゆる裏方の仕事は三名でこなせる量ではない。平常時でもそうなのだから、いざ選挙ともなればなおさらであった。
俺にも三人の私設秘書がいて(これでもかなり少ない方だ)、その中でも、常に俺と行動を共にする谷崎透(とおる)は、いわば腹心の秘書であった。
主従関係ははっきりしているが、学生時代から気心知れた仲なので、容赦なく俺に意見してくる。小学校からの同級生だが、例えるなら弟みたいな存在だ。
俺は、一人っ子なので実際の弟がどんなものなのかは知らないが。