ハロー、マイファーストレディ!
「これは、何だ?」
地元事務所として使っている家は、俺が高校時代から一人暮らしをしていた家だ。
俺が高校に入学する年、親父が三度目の結婚をした。
流石に居心地の悪さを感じて、父に別居を申し出たら、あっさりと了承されて、この中古の一戸建てを与えられた。
そして、議員となってからは一階を改装して事務所として使っている。
本当は、親父が長年事務所として借りていたビルが取り壊し予定で、次の場所が見つかるまでの“仮住まい”のつもりだったのだが、いざ業務を始めてみれば特にこれといった問題もなく、俺としては仕事を終えればすぐに二階で休める(逆に、起きればすぐに仕事を始められる)という居心地の良さから、そのままになっていた。
そして、また今回も、この風変わりな事務所が役に立っていた。
報道の翌日、真依子を匿うためにこの事務所に連れてきた。
ここには、日中は常に秘書が常駐しているし、基本的に生活できるだけの設備が整っている。しかも、事務所に人が住めるだなんて思っていないマスコミからはノーマークだ。
安全で快適な避難場所としては、まさにうってつけであった。
というわけで、あれから三日後。
どうしても外せない用件で急遽地元へと戻っていた俺が、夕方事務所に寄ってみれば、玄関まで旨そうな鰹のだしの香りが漂っていた。
香りを辿って、事務所を通り抜け、その奥にあるキッチンへと足を踏み入れる。