恋愛優遇は穏便に
次に肉のメイン料理が届けられ、食していたときだった。

政義さんがフォークとナイフをお皿に置くと、テーブルに頬杖をついて私と政義さんの顔を交互にみていた。


「で、二人は結婚するの?」


結婚のことなんて今する話じゃないのに。

でも、答えてほしい気持ちはある。


「時期をみて、いつかは」


政宗さんは言葉を濁しながら話をした。

だって、まだ私たちははじまったばかり。

いつかは結婚したいけれど。


「そっかあ。いつかねえ」


政宗さんはイラついているようで、パンを大きめにちぎり、口に入れている。

それを肴にするかのように、グラスの中のワインが政義さんの口の中へするすると消えていく。

空になったワイングラスをテーブルに置くと、すかさずウェイターさんがワインボトルを持ち、赤ワインを注いできた。

口の中が乾き、私もグラスに半分残ったワインを飲む。


「うらやましいなあ。きっとキスもうまいんだろうね」


思わずワインが口から出そうになる。


「上手だけど、それがなにか」


政宗さんはすました顔をして政義さんに言い返した。


「まあ、根掘り葉掘り聞くのもなんだよね。悪かった。でもね」


ワインで酔ったのかわからないけれど、政義さんはクスクスと軽く笑うと、私のほうへ冷たい目を向けた。


「欲しがりそうなキスをするのかな、って」


「兄さんっ!」


「冗談だよ、冗談」


まったく冗談も通用しないなんてなあ、とつぶやきながら、ゾクゾクと寒気がしている私を尻目に、また政義さんはワインを口にする。
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