恋愛優遇は穏便に
席に着くまでの距離が長く感じた。

たえず政義さんと政宗さんの視線が私に向けられてその視線が痛く感じられた。


「遅かったですね。具合でも悪かったんでしょうか」


「……いえ」


私の着席とともに、ウェイターさんがデザートと紅茶を用意してくれた。

甘くおいしいはずなのに、ちゃんと味わうことができなかった。


「とりあえず、部屋貸してくれてありがとう」


「別にいいんだよ。こうやって食事会ができたのも何かの縁だからね」


政宗さんの顔をみたと思ったら、今度はじっと私の顔を見ている。

いたたまれなくて下を向いた。

デザートを食べて落ち着いてから、そろそろ食事会をお開きにしようと政宗さんが言った。


「いい食事会だったよ。おいしいものをいただけたから」


クスクスと政義さんは笑っている。

それに反応するように唇が震えた。


「またやりたいけど、政宗」


「あのさ、1度きりっていったよね?」


「楽しいんだから、また機会を設けてやりたいなあ。むつみチャンも一緒に」


「そんな勝手は許さないよ」


「あはは、怒られちゃったよ」


どこまでものん気に振舞っているんだろうか。

あんなに激しいキスをしながら、普通に振る舞えるなんて。

ウェイターさんがやってきて、会計を促した。

会計は席で払うことになっており、政義さんが払ってくれた。

ごちそうになったので、ごちそうさまでした、と言ったら、こちらこそと涼しい顔をしてかえしてくれた。
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