恋愛優遇は穏便に
政宗さんに抱かれているのに、気を抜くと政義さんとのキスを思い出す。

政宗さんを集中して感じていたいのに。

思わず、政宗さんから体をそらしてしまった。


「痛かったですか?」


「あ、ごめんなさい……」


「そんなに強くやったわけじゃないんですけど」


「いえ」


「だって、泣いてるじゃないですか」


「これは……」


頰を触ると、うっすら涙が流れていることに気づいた。

政宗さんに涙をみせるだなんて。

政宗さんもせつなそうにまつげが震えていた。


「やっぱり、食事会になんか、むつみさんを連れて行かなければよかった」


「政宗さん……」


私に覆いかぶさっていた政宗さんは私の隣に体を横たえた。


「何故だか、兄にむつみさんを獲られたような気がしたんです」


政宗さんの震える声に、胸が痛かった。


「ずっと兄はむつみさんのことばかり気にかけているようでしたし」


政宗さんはわかっていたんだ。ずっと、政義さんが私を気にしていることを。


「僕はずっとむつみさんと付き合っていたい」


そういうと、おもむろに私を抱きしめてくれた。
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