恋愛優遇は穏便に
「いつものむつみさんに戻って安心しました」


「ごめんなさい。心配かけて」


あんなに強く抱きしめあったのに、やっぱり求めてしまう。


「いいんですよ。むつみさんを想う気持ちは誰にも負けませんから」


気持ちのこもった言葉を投げかけてくれて、本当に嬉しい。

今まで付き合ってきた人の中で初めて大切にしてくれている。

それなのに、私は……。


「政宗さん、あの」


「どうしましたか」


政宗さんの問いかけに視線をそらした。


「いえ、なんでも」


「何か僕に隠し事でもあるんでしょうか」


「え、いえ」


「まあいいです。むつみさんは僕のこと、わかっていると思いますから、いつか話してくれればそれでいいですから」


「政宗さん、私……」


政宗さんの笑顔に胸がきゅっと苦しくなる。

それがわかったのかどうか知らなけれど、頭をポンポンとたたき、ゆっくりと頭を撫でてくれた。


「ですけど、僕だけのむつみさんなんですからね。そこはわきまえてくださいよ」


「……はい」


しかし、参りましたね、と政宗さんは頭をかいている。


「どうしてもむつみさんを抱きたくなってしまう。不思議ですね」


「政宗さんたら」


「言い訳じみた話ですけど」


そういうと、政宗さんはやさしいキスを唇におとしてくれた。


「たとえ、むつみさんを壊そうとするやつが現れても、僕はずっとむつみさんを愛しますから」


「こんな私なのに……」


「こんな、じゃないですよ。僕の唯一の宝物はむつみさんですから」


見つめ合うだけなのに、体が熱くなる。

何度も確かめあったのに、また政宗さんは私の奥底を探っていった。
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